吉田まゆ | 棗『ふわひらら』
少しくすみを帯びた、シックで大人っぽいピンク色。
その柔らかな色の中に、銀や卵殻、夜光貝の小さなきらめきが散りばめられています。
漆を幾重にも塗り重ね、乾かし、研ぐ。
その工程を繰り返しながら、独特の色彩や表情を生み出す「変わり塗り」。
漆では表現しにくい白を生み出す卵殻と、光の加減で虹色に輝く夜光貝の螺鈿。
異なる素材が重なり合い、奥行きのある美しさを生み出しています。
「ふわふわ、そよそよ、さらさら、きらきら、ひらひら、ひらり。
自由に景色を想像していただけたらうれしいなと思いつくっています。」
そう語る吉田さん。
蓋を開けると、外側の柔らかな色合いとは対照的な、深く艶やかな飴色の世界。
その奥にも、繊細な光の粒がきらめいています。
吉田さんは、漆を塗り重ね、研ぎ出すことを、そこに重なった時間や記憶を磨き出すようだと表現されています。
手のひらにおさまる小さな棗に、季節の気配や、いつか見た景色がそっと宿っているようです。
通常の棗より少し小ぶりで、お茶箱にも収まるサイズ。
静かな華やぎと、想像する楽しさを感じる作品です。
素材|漆・カツラ・卵殻・銀・夜光貝・顔料
技法|変わり塗り
サイズ|直径5.9cm × 高さ5.9cm
日本の伝統工芸の地、金沢で学ばれました。
『素材である漆は、塗り重ねるたびに空気も積み重なり、それを研ぎ出すことは、色の層と共に重なり合った周囲の音や匂いまで磨き出すようで、そこに重ねてきた時間をも感じさせます。
その美しさを表現できるのは、私が魅力を感じている箱という形体であると考え、季節の移ろいや記憶の中の景色などをモティーフに表現を試みています。
<吉田 まゆ>
1988年 千葉県生まれ
2016年 金沢美術工芸大学工芸科 漆・木工コース 卒業
2018年 金沢美術工芸大学大学院 修士課程工芸専攻 修了
2021年 金沢卯辰山工芸工房 修了